26.改めて自己紹介

 

「廻り逢うそのときに」26話。

【とある願い、改めて自己紹介】

 

 

 

 

目の前に立つ茶金髪の男は動揺する私と違っていたって冷静だった。どうしよう。正直、単独行動をしていたら現れるんじゃないかって思っていた。でもこんなに早いとは思わなかった。

『……ユキは間違いなく狙われてる。しかもヤバイ奴に』そう言ったダラクの言葉を思い出す。リスクを負う禁呪を使ってまで私をこの世界に呼んだ人。この人はなにを望んで私をこの世界に呼んだんだろう。なんのリスクを負ったんだろう。聞きたいけれど”もしかしたら”が本当だったときが怖くて聞き辛い。

男は私を全身眺めたあと、なんともいえない表情を一瞬浮かべた。悲しそうなんてさえ思ってしまう奇妙な顔だった。かと思えばまた無表情になって淡々と話し出す。

 

 

「いまお前が魔法を使えば、お前の連れにすぐ感知されるぞ」

 

 

落ち着いた声色だ。……低くて、心地いい。

男から敵意や暴力的な空気は感じられない。なら、ひとまずは大丈夫だろうか。 少しだけ気が抜ける。男は今私を連れ出しにきたわけじゃないようだ。

だけど男が言ったことを租借するにこの男は私が1人になるのを待っていた。 私がダラクとリオと晃と一緒に行動しているのを知ってる。そして魔法を使おうとしたところを見計らって現れた。

分からないのは、私がダラクたちにバレずに魔法の練習をしたいことを知って助言してくれることだ。なにが狙いなんだろう。ここで魔法を使ってダラクたちにバレるんだったら、いっそ使ってここに呼んでしまおうか。ダラクとリオはこの状況を喜んで受け入れることだろうし。

考えあぐねていたら男が動いた。人差し指で円を描く。ただそれだけだったのになにかが変わって、その変化に肌が粟立つ。空を見上げる。一瞬、ブレた気がした。

 

「なにをしたの?」

「結界を張った。これでお前の拙い魔法が外に漏れ出ることはないから安心しろ」 

「……どうも、ありがとうございます?」

「礼はいらん」

 

なにがなんだか分からないけれど男はここら一帯に結界を張ったらしい。それも私が魔法で失敗をやらかしたとしても結界の外に出ることは無いぐらい強固なものを。とりあえず選択肢の1つがなくなったことは分かった。なんだか頭を抱えたくなる。

 

「や、あの、なにをされてるんですか」

「座っている」

「あ、そ、そうですか」

 

私がぼおっとしている間に男は何故か魔法で椅子を出して座った。 もうなにがなんだか分からない。真っ白な雪が広がる景色のなか椅子があるだけでもおかしいのに、男はそこに腰かけて私の行動を観察している。足を組み手を組む男を見ていたらなんだか面接を受けているような気持ちになってしまった。

とりあえず応えてくれるんだから会話をして状況判断に努めよう。

 

「……なんで助けてくれるんですか」

「……気まぐれのようなものだ」

「あなたにとって私はどう役に立つ?」

「……俺がいうのもなんだが、この状況でその質問は愚かだと思うが」

 

男は微笑みながら言った。案の定、前と同じように目は笑っていな い。確かに、そうだろう。

敵か味方も分からなくてなにが男の琴線に触れるか分からない状態で、抵抗する手段も策もないのに悪戯に動くのは危険だ。もしもが現実になったとき、私にはなすすべもない。いくら魔力が尋常じゃないぐらいあったって、使えないんじゃ意味がない。

魔法を使わずこの男と戦う?絶対に嫌だ。

ダラクを髣髴とさせる男は、どう動くかまったく見えない。強いんだろう。それぐらいしか分からない。嫌な冷や汗が流れてくる。一つ間違えればパニック状態になりそうだ。注意して言葉を選んで、息を吐ききったあと、答える。

 

 

「あなたはまだ私が必要で、だから、まだ私はここに居れる」

 

 

言い過ぎかもしれないけれど、私はまだ死んでない。もし男が敵なら今ここで殺されるのもありえない話ではない。

 

 

「あなたは私を連れ去ることも、ない」

 

 

まだ。

これは確信が持てなかったけれど、今のところはそうじゃない。男は私が1人になるの待って、魔法の練習に一応協力までして、それ以上はなにもせず傍観に徹している。なんらかの確認をしてから行動に移すのだとしたら愚策だろうけれど、 そうではない気がした。男はゆっくりと言葉をおとす。

 

「姿を現したのは興味本位だ。お前少し前に魔法を使っただろう。一応安否を確認しておきたくてな」

「なんで私が魔法を使ったことが分かったんですか」

「俺に限らず一部の奴らも知っただろう。地を揺るがしたことに気がつかなかったか」

 

地を揺るがした?

考えて、ぞっとした。思い当たったのはザートとシリアさんと別れたあと好奇心で唱えた魔法だ。レノアとただ口にしただけのあの瞬間、風が巻き起こって私はよろめいた。あれは足の力が抜けたんじゃなくて、地面が揺れたんだ。

それを、 この男曰く一部の奴らが知った。

男は私を手元に確保することは考えていないらしい。ただ生きていることが大事なようだ。それはいざというときに私を使うためだろうか。 

どうしようか。

唾を飲み込む。元の世界じゃ考えられない異様な緊張感を覚えていた。早く打つ心臓に、巡る思考。 どうしよう、悪い癖だ。

好奇心が疼いて私を誘う。

警戒よりも面白そうだなんて、ダラク達が聞いたら目をひんむきそうな感情が勝り始めている。 そしてきっと男はそのことに気がついている。最初よりもよほど感情が見えてきた男に親近感を持ってしまう。

男もきっと今楽しんでるんだ。男には目的がある。多分、その目的を達成するまでにまだ時間が必要なんだろう。その間の期間を“折角だから”楽しんでるんだ。

 

 

「ねえ。どうせ助けてくれるなら私に魔法を教えて」

 

 

笑おうとして気がついた。元から私は笑っていた。耐え切れなかったんだろう。男は少し目を見張ったあと、喉を震わせて笑った。今度は私が驚いて目を見張ってしまう。無表情を崩した男の顔は子供みたいだった。楽しそうに笑っていて、なんだか居心地が悪くなる。

良い選択か悪い選択か分からないけれど、この質問によって男に敵意を持たれることはなかったようだ。

 

「お前、名前は」

「ユキ」

「……とりあえず、相手に名乗るときは注意もしくは躊躇を覚えたほうがいい。ユキ」

 

私の名前を読んだ男の声が耳に心地良くて、少し注意散漫になる。 相手に名乗るのに注意する?なぜかと聞いてみれば、男は、フッと笑った。大人びた表情だ。立ち上がった男を見上げる。

 

「こういうことだ。俺の名前はフォル。ユキ……契約をしよう」

「わ」

 

男、フォルが名乗った瞬間、フォルの指先から青白い光が出た。指は筆のように宙に青白い光を描いていく。二重丸の円の間に文字が書かれていく。知らない文字なのに分かった。あれは私とフォルの名前だ。一番中央の円の中に青白い光が埋まる。あれは魔力だろうか。

ふっと契約について書かれた本の内容を思い出す。双方が誓約する契約。お互い呪に魔力を通して自分の名前に誓う契約魔法。

気がつけば宙に書かれた呪とまったく同じだろうものが私とフォ ルを包むような大きな形になって足元に広がっていた。青白く光る呪に喜色ばむ私はきっとどこかおかしい。

 

「名が知られれば契約に巻き込まれる可能性がある。相手が自分よりも魔力を持ち、その呪に勝る魔力を持つ者なら、強制的に契約を結ばれるだろう。お前の場合不要な心配だが」

「分かった。……綺麗」

「お前は思考回路がズレているな」

「五月蝿い。だって綺麗だし」

「恐れ知らずなのかただ愚鈍なのか」

「言い過ぎじゃありません?」

 

心外だと言い返せば、フォルは笑いもせず無表情になった。

それ結構ダメージ食らう……。

そう思って笑ってしまった。なにを考えてるんだか。

 

「どうすればいい?」

「この呪に自分の魔力が溜まることをイメージすればいい。難しいのなら指でなぞったり、目を瞑り創造するなどイメージに足ることをすればいい」

 

イメージ。さっきのフォルの行動を思い出す。フォルのように魔力を指先に出せないだろうか。

 

「魔法はすべてイメージだ。イメージが細部まで行き届いているのなら無駄がなく、その魔法に必要とする魔力を抑えられる。イメージが足りないのなら魔力量を多く必要とする。イメージが出来ていたとしてもその魔法に足る魔力量が元々足りていないのなら出来ない。お前は無駄に魔力が多いのだから、イメージが足りず多くの魔力が必要になったとしても問題はない。楽に考えろ」

 

分かりやすいけれど余計な言葉も混じっていてなにか言い返したい気分になったけど、本心が伺える無表情だったからやめておいた。もっと強く言い返されそうだ。

代わりに魔法を使うことに集中する。

指先に魔力が流れる……そして指先に魔力をだす?穴が開く、かな。私の中にあるだろう魔力が零れるイメージだ。その瞬間、目で確認できるぐらい指先にぷくりと魔力が浮かび、あふれた。

 

「調節しろ」

「他に助言は!というより真っ黒なんですがっ!」

「過剰な魔力の放出は倦怠感や疲れを招き、それを自覚しながら放出し続けた場合、結果死にいたる。黒いのはお前が闇属性だからだ」

「そういうことじゃなくてですね!」

 

指先から溢れる私の魔力らしい黒い液体が塊になって地面に落ちていく。さっきイメージしたように水滴のようになってぼたぼた、ぼたぼた。

私は非常に混乱していた。

闇属性?確かリオには光属性と言われたはずだ。それよりも、これはどうやったら止められるんだろう。イメージ……そうだ、穴を閉じなきゃ。ううん、小さく小さくすればいい。手に留まるぐらいの魔力だけだす。少しだけ。

 

 

「出来たな」

「出来ましたよ」

 

 

かわりに冷や汗が凄い。そして倦怠感がある。フォルを睨みつけて鬱憤を晴らすけれど、フォルはどこ吹く風だ。

 

「なんとなく、やり方は分かったから契約は出来る。でも契約内容は?」

「そうだな……こうしよう。俺から交代で契約事をあげていき了承するなら「誓う」と宣言し、了承できないのなら「誓えない」とする。どうだ?」

「もし違えたなら、その代償は」

「相手の願いをどんなものでも叶える」

 

思いがけない提案に心臓がドキリと脈を打つ。

どんなものでも。それはなんて魅力的だろう。そしてなんて恐ろしいんだろう。

 

「……いいよ」

 

フォルの近くに寄る。前と違って髪をすっきりまとめているからよく顔が見える。初めて出会ったとき目は笑っていなかったけれど、今は面白そうに弧を描いている。少しつりあがってる口元はなんとなく挑発するように見えた。

この顔はあまりダラクと似てないな。

そんなことを思いながら手元に浮かんでいる契約の文様に触れる。魔力を流すってまだよく分からなかったけれど、イメージしやすかったのは触れながら色を足していくことだった。綺麗な青白い文様に黒が混じっていく。なんとなく勿体無い。だけど出来上がった文様は夜空のような深い群青色になって綺麗だった。なんだか嬉しくて見上げれば、間近にフォルの顔が見える。傷があった。左側額近くから頭にかけて深そうな切り傷だ。色の変わった皮膚が痛々しい。視線を向けられていることに気がついて見てみると、茶金髪の睫の下に蒼い瞳が見えた。私の顔が映っている。

 

「……斬られたの?」

「そうだ」

「治癒魔法は」

「間に合わなかった」

「そっか」

「始めるぞ」

「ん」

 

淡々と答えたフォルは私の返事をきくと、私と向き合って一呼吸置いたあとゆっくりと話し出した。

 

「これより契約を行う。契約内容を了承するなら「誓う」と宣言し、 了承できないのなら「誓えない」とする。フォルとユキが執り行う。 契約を違えた場合は、相手の願いを必ずどんな内容でも叶える」

 

群青色の文様が少し金色を帯びた粒子を飛ばしながら光る。

本当に、夜空のようだ。

 

「ユキ、俺の名前のことをお前の連れには話すな。俺の存在や思惑などは別に話しても構わない。ここでいう連れとは今のところダラクとリオと晃だ。そしてもし今後旅に同行する者が増えたならばその者も対象とする」

 

契約って、怖いものなんだ。はっきり明示しないと足元をすくわれる。フォルは今、魔法を教えてくれるようにそのことを教えてくれている。なぜかとは思うけど今は有難く頂戴しよう。逃げ道を作らせないようにしないと。

 

「誓う。フォル、私に魔法の使い方、闇の者について、オルヴェンのことを教えて。その場合、教えられないことは教えないでいい。だけど教えてくれる魔法と闇の者とオルヴェンに関しての情報は必ず真実を言って」

「誓う。ユキ、自分で命を絶つな。自分の命を脅かす行為はその限りではない。そしてもしも万が一の場合は俺を呼べ。文様を用いて、必ず、俺を呼べ」

「……誓う。フォル、出来る範囲で私の手助けをしてほしい。無理なことや都合が悪いときは別に構わない。お互いにコンタクトをとれるようにしたい」

「誓う。俺はこれぐらいだ。他にもなにかあるか?」

「ないよ」

「なら、契約成立だ」

 

伸ばされた手を握ったとき丁度契約が完了したらしい。文様がすべて粒子になって舞い上り、握手する私とフォルに降りかかる。キラキラしていて肌に触れると溶け込むように消えていく。

 

「ねえ、意味のない契約を作ったのはなんで?」

「お前には効果があるだろう」

「そうだけど」

 

私が自殺をしない契約をした理由はなんだろう。する気はないどした場合私にかかるペナルティはその時死んでいる私には叶えられない。これが脅しや牽制を含めてじゃなく、ただ、私が自殺を選ぶような出来事がこれからあるんだとフォルが考えていての言葉だったとしたら、この契約は誓わないほうがよかったのかもしれない。なんて。

 

「じゃあフォル、早速教えてもらいたいことと手伝って貰いたいことがあるの。私転移魔法を使いたいんだけど、転移魔法って簡単に出来るもの?私に出来るかな」

「今のお前がしたらバラバラになるんじゃないか?」

「……冗談?」

「さっき誓ったところだろう。まあ、バラバラになるかどうかは分からないがそういったリスクを負う可能性はある。転移魔法は転移する場所を正確に思い描いてしなければならない。少しでも違えば 地面に埋まったり、そこに立つ自分を想像できなかったことでバラバラになったり、はるか高い空に転移することになる。自分の想像力を補うために効果的なのは転移したい場所に文様を描き、それと同じ文様を描いて転移することだ。一番簡単なのがこれだな。公共機関には転移するための場所に文様を置いていて、そこに魔力を流し込めば文様に応じた行き先に行けるようになっている。やってみろ」

「バラバラとか脅しておいて最後は投げやりですか」

「それしか上達する術はない」

 

文句を言いながら雪の上に三角の単純な文様を描いてそのなかに名前も書いてみる。しかし文字の違いは大丈夫なんだろうか。 文様は自分の名前を書かなきゃいけないって本に書いてあったけど、 この世界の文字で、とは書いてなかった。まあ、いいか。

三角の文様を描いたところから離れて深呼吸をする。イメージ、イ メージ。宙に同じ文様を描いて、魔力を流し込んだ。

 

「出来たな」

「出来ましたよ」

「ひとつ言うなら瞬きを合図に転移することに慣れないことだ。戦闘では命取りだ」

「……はい」

 

一瞬で身体がどこか違う場所に移動する感覚は怖くて思わず瞬きしてしまった。それをフォルは目ざとく気がついたみたいだ。言っていることは分かるけれどしばらくは難しい。まあ、なんにせよ使えた。

これで晃が現れたあの洞窟を調べることができる。あのときは少しの間しかあの場所にいられなかったからじっくり見れていない。 本曰く、転移は呪を唱えればすぐに飛んでいけるものじゃない。転移したい場所に描かれた文様は存在を保つために、文様を描いた人物の魔力を最低限の分だけだが吸い取っていく。だから使わなくなったのなら消しておかなければならないのが普通だ。文様に吸い取られた魔力が命取りになりかねないからだ。他にも面白い特徴がある。文様に通す魔力が少ないと時間をかけて転移して、多ければ一瞬で転移が可能なのだそうだ。

 

リオは自宅へ転移する文様にはさほど魔力を通していなかったのに、 あの洞窟へは一瞬で飛べるようにしていた。

 

なんらかの理由であの洞窟へとすぐ行けるようにしていたんだ。その理由が、あの洞窟に行けば分かるかもしれない。リオは自分からは教えないけれど、私が自分で知っていけるきっかきを作ろうとしてくれている。色んな謎をあちこちに覗かせて、待っ てる。邪魔するんじゃなくて手を貸してくれているからいいんだけど、その背景は凄く気になる。

 

 

「ありがとう凄く助かった。あと、治癒魔法ってどうするの?」

「治癒魔法?自分が持つ魔力に祈りを込めて相手に渡すものだ。人は他人の魔力を受け付けにくいものだから治癒魔法といえど抵抗される。その抵抗を起こさないよう、相手と同じ魔力に自分の魔力を変化させて浸透させなければならない。転移魔法より難しいな。手を貸せ」

「わ、凄い。緑色の光だ」

「イメージで色は変わる。この場合だと本人が思う癒しの色だ」

「……だとしたら、さっきの私の黒い魔力はなんだろう。フォルは私が闇属性だからって言ったけど、他の人には光属性だって言われたよ」

「他の人というのは守人のリオか」

「……そう」

「そうか。……俺には正確なことは分からない。お前は魔力の属性2つ持ちなのかもしれないな。あまりいないが珍しいことではない」

 

 

相談するか迷ったけれど話しておいてよかった。このことは調べて裏をとろう。フォルは悩んだあと真実だけを口にした。なにか他にも推測されることがあるのかもしれない。 繋がれた大きな手を少しひいてフォルの意識をそらせる。そしてもう片方の手をフォルの顔のほうに伸ばした。

私がもしなにか急に危害を加えるようなことをしても防げる自信があるんだろう。フォルは私の突然の行動に警戒することなくじっと見ているだけだった。私がフォルの額を触って魔力を流したときもそうだ。 ただ、感じた魔力の種類に驚いたように表情を変えた。手を離してみる。額の傷は消えていなかった。

 

「……治癒魔法は傷や病なら負傷した周りの組織を活性化したり新しく負傷箇所を補って元に戻す。しかし死んで活動を止めたものには補いでは足りない。だから効果がなく無意味だ。そして傷口が塞がり異常をきたしていない、こういった傷跡も補う必要がないから効果はない。色を元に戻す、という意味合いで異常を戻すものもあるがそれは厳密に治癒魔法ではない」

「そっか」

 

フォルの額を触っていた手がとられる。温かいなと思っていたらなにか小さいものが掌に転がった。思わず首を傾げたら、ぽん、と大きな手が私の頭に置かれた。しょうがないなとでもいうように撫でられる。

 

 

「ただ、治癒魔法として相手に流れた魔力は相手に力を与える。……これで連絡をとれ。コクトの使い方は他の連中に聞け」

「え、え?有り難う、ってフォル!」

 

 

言うが早いかフォルは文様も描かず姿を消す。

あれはどうやってるんだろう。間違いなく上級編の転移を出来るわけがないけれど気になってしまう。あと椅子が残ったままなんだけどどうしたらいいんだろうか。

手に転がる木彫りの指輪、コクトを指にさしながらぼんやり考える。ほどなくして結界は消えていったけれど、椅子は残ったままだった。

 

 

「……変なの」

 

 

顔が熱い。

慣れない旅で肌についた小さな傷が消えている。そしてさっきまであった疲労感がなくなっていた。

フォルが言った相手に力を与えるというのはこういうことだったんだろうか

顔が、熱い。

フォルに撫でられた頭を触る。私の頭を撫でたときのフォルは、凄く優しい微笑みを浮かべていた

 

 

 

 



 

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