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閑話01可愛い夫婦

 

 

 

ロイとイメラが一緒に住むことになった最初の日。

 

 

 

  

 

 

 

「おい!おま、危ない!危ない!包丁を俺に向けるな!」

「ええ?だったら料理中に話しかけないでよ」

「手!切る!だーーーっ、危ねえ……。もう見てらんねえ……」

「だったらどこかに行ってよ。ロイ邪魔だわ」

「はあ」

 

 

悲壮な表情を浮かべるロイはもうなにも見たくないといわんばかりに両手で顔を覆う。そんな様子を口を尖らせながら見ていたイメラは右手に握り締めていた包丁を握り直し、やってられないとばかりに台の上に転がっていた野菜を両断する。だんっ、と強い音が鳴る。

 

「頼む。せめて優しく包丁をおろしてくれ」

「あらなに?優しさが必要なものなの?」

「や、そもそも片手で斧振るうみたいにするのがおか──おいおいおいおい!やめろやめろ!駄目だ!俺が作る!お前は見てろ!」

「五月蝿いわねえ」

 

野菜についていたヘタをアイスピックで氷を削るかの如く包丁を突き刺すイメラに、ロイは一瞬倒れそうになった。慌ててイメラから包丁を取り上げる。このままだとイメラは自分の指を切断しかねない。

 

「私、料理できるわ」

「したこともなかったくせによく言う。いいから黙ってみてろ。それで、それからしてくれ」

「しょうがないわねえ」

「はあ」

 

俺は一体何をしているんだろう。

長老からイメラと一緒に住むように言われて数刻。腹も減ったし、ちょうどいいから飯を作ってくれてと言ったのが始まり。人の家を見て小さいだの素朴だの味があるだの好き勝手評価して両手広げながら走り回ってたイメラに期待したのが愚かだった。

 

「ねえねえロイ、これはなんて言うのかしら?」

「魔よけ鈴」

「魔よけ?魔物が出るの?魔物っているの?闇の者のことよね?」

「それもそうだが、獣避けだ。ここら辺に住んでいる獣は基本的に臆病な奴らが多いからな」

「村に来たら危ないのかしら。人を襲うの?」

「奴らも腹が減ってたらそうだろうな。人間も肉だ。まあ、目下の理由は畑荒しを防ぐため」

 

絶世の美女といっても過言でもないイメラは子供のように表情を変えながら次から次へと質問をしてくる。そして料理を作り続けるロイ。ほんの少しだけやるせない。

 

「いい匂いねえ。お腹空いたわ」

「食器を用意してくれ。その棚にある」

「任せてちょうだい!」

 

それでも、笑ってしまうのは嫌だとは思っていないからなのだろう。

カチャカチャと食器が音を立てて、テーブルに並んでいく。スープを器にいれれば、イメラは目を輝かせた。立ち上る湯気から香る匂いに目を閉じて悦に入る。

 

 

「いただきます!」

「……いただきます」

 

 

食事を頬張り満面の笑みを浮かべたイメラにつられてロイも笑みを浮かべる。

急遽作った椅子は座り心地はそれほどよくもなかったが、久しぶりの賑やかな食卓にしょうがないとロイは呟く。

 

 

 

「なにが?」

「なんでもない。それよりしっかり噛んで食べろよ」

「私そんなに子供じゃないわ!」

「はいはい」

 

 

 

次の日、まる聞こえだった会話に茶化されるのはこれからの日常茶飯事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

【闇の者】

出会えば死ぬとまでいわれている存在。人型や獣型もいるが総じて全身真っ黒。例外あり。

獣は野生動物で、魔物は特殊な能力を持っている獣のことを呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 



 

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