01.風紀委員'sの日常

 

リクエストありがとうございました^^

佐奈と刀と剣の日常

 

 


今日は早くSHRが終わって、美加も生徒会の仕事が残っているとのことでさっさと生徒会に向かってしまったから、私も早い時間だけど風紀室に向かうことにした。初の一番乗りかと思いきや、風紀室から話し声が聞こえてくる。刀くんと剣くんだ。

 

「早いねー」
「あ、佐奈ちゃんだー」
「アンタはいっつも遅いですねー」

 

荷物置きにかばんを置いて、机の上のお盆を覗き込む。うへへ、新しいクッキーが追加されてる。風紀室に来てすぐ一番に確認するのはお盆に入っているお菓子だ。なんと経費!で落ちているらしいこのお菓子達は、時々東先輩達の善意で増やされることがある。それが大体月曜日と木曜日。そして今日は月曜日。

 

「アンタ太るよ」
「五月蝿い剣くん。黙っててください」
「佐奈ちゃんお菓子大好きだねー」
「美味しいからね」

 

鼻歌を歌いながら棚から私専用のカップを取り出す。一応2人にもお茶が欲しいか聞けば仲良く手を上げた。ああ、平和だ。ティーポットにお湯を注いだ後ティーパックを蒸らす。ポットに水を入れて東先輩達の分のお湯を確保した後、2人が楽しそうに話す間にあるテーブルの上に素敵な紅茶セットを並べる。
放課後風紀委員として働く前に風紀室でティータイム。なんて優雅なんだ風紀委員。ああ、良い香り。私のお気に入りの紅茶はオレンジペコだ。そしてそして今日のお茶請けはなんとジャムクッキー!……風紀委員になってよかったあ。

 

「早すぎ」
「五月蝿い」

 

座ってすぐお盆からお菓子を取り出して封を開ければ呆れた剣くんが小突いてくる。あげないからね。苺ジャムの甘酸っぱさが口の中にぐわーっと広がる。うう、幸せ過ぎる。

 

「可愛いなあ。はい、これあげる」
「……聞いてねえぞ。つか食うの早過ぎ」

 

まだ来ない東先輩を心の中で崇めながらもう1つ袋を開ける。剣くんさっきから五月蝿いなあ。あ、そうだ。

 

「風紀室って、本当に、人来ないよね」
「そういえばそうだねー。はい」
「子供か。でもそういやそうだよなー。つか、ここに来るまでもほぼ人に出会わねーしー。やっぱあれか。本当なんかねー」
「なんかそういえば色々いわれてるんだってね。はい」
「ん。……ん?色々って?」
「いろいろ」

 

話題を提供してみれば2人とものってくれた。それはいいんだけれど、刀くんから貰ったチョコを食べたお陰か糖分補給された脳が疑問を訴えてくる。
色々ってなんだ。
隣に座る剣くんはニヤニヤ笑っている。嫌な予感がして、気持ちを落ち着ける為に紅茶を飲む。……美味しい。

 

「出たんだって……ここで。うっわ!紅茶!アンタ!うっわああ!女子として終わってる!!」
「げほっ!つあ!剣くんが悪い!ひどい!やめて!嘘だああああ!」
「ちょ、ま、お、うぇ」

 

必死に冷静を装った私を奈落の底に突き落とした剣くんは、私が噴出してしまった紅茶がズボンについたのを指差して喚く。知るか!というかそれは剣くんのせいだ!両肩抑えて前後に振れば剣くんの頭ががくがく揺れる。逃げられないように満身の力を込めてやる。
そんなことよりもしかして、時々背筋がぞっとすることがあるのってまさか、本当に、本当に!?この前だって……。

 

「あれは城谷先輩か」
「なんの!話だよ!つか、酔った……」

 

風紀委員かと疑うぐらいの頻度で風紀室に現れる桜先輩に会いに来た……遠くから見に来たんだろう城谷先輩はふとした瞬間に私の目に飛び込んでくる。そういうときは決まって肌が粟立っている。私の体は城谷先輩探知機になっているんだろうか。どうせならもっと他の特殊能力が欲しかった。
にしても城谷先輩は幽霊うんぬんより怖いかもしれない。前なんて神谷先輩と話していたら神谷先輩の背中側にある窓の向こうに城谷先輩の生首が見えた。壁を盾にして覗き込んでるんだって数秒して分かったけど、心底止めてほしい。

 

「剣ばっかズルイ。佐奈ちゃん、怖いの嫌い?」
「怖いわけじゃないんですけどね」

 

剣くんの両肩捕まえていた手をすくいあげられる。隣に座ってきたせいで3人の体重を受け止めているソファが凄くへこんだ。ごめん、耐えてください。ギシッと鳴った音が聞こえてソファに同情していたら、すくいあげられた手が万歳状態でそのまま後ろに引っ張られる。刀くんにもたれかかるというよりもう少しで膝枕じゃないか状態になったとき、目が合った刀くんはさっきの剣くんみたいに笑った。

 

「この前僕が風紀室に一番乗りした日ね、閉まってたドアの向こうからすすり泣く声聞いちゃったん、づあっ!」
「い゛だあ!この石頭!」
「石頭じゃなくて顎だからねー」

 

体力測定でこそ発揮したかった勢いで上体起こしをしたせいで、おでこを刀くんの顎にぶつけてしまった。刺さった!?刺さった?ありえないぐらい痛むおでこに涙が出てくる。本当にありえない。

 

「あーあーもー悪かったですーはい、これ」
「ごめんね佐奈ちゃん」

 

おでこを抑えながら顔を起こせば、涙がポロリと頬を流れた。2人は戸惑ってなにか言っていたけれど聞こえなかった。だって私の目には、私の目がおかしくなければ、2人の手にそれぞれレモンサブレとココアクッキーがあった。一袋ずつ包装されているお高い奴だ。自分でも驚くほど涙が引っ込んだ。

 

「それ、食べていい?」
「「あげるからっ!」」
「やったー!ありがとう」

 

貰った瞬間包装を破って、手始めにココアクッキーを食べる。……幸せ過ぎる。
2人は呆然としていたけれど、顔を見合わせた後、笑った。

 

「立派に太れよー」
「もう1ついる?」
「とりあえずお前ら敵だ」
「え!なんで!」

 

頭を撫でてきた2つの手を叩き落として今度はレモンクッキーを食べる。最近本当に太ったんだよ。でも、やっぱり美味しいなあ。
ああでもそうだ。

 

「あげる」

 

1人だけで食べるのもあれだから、学校に持ってきていた苺チョコを2人に1つずつ渡す。2人はきょとんとしたあと、1人は呆れたように笑って1人は嬉しそうに笑った。
やっぱり一緒に食べるのがいいよね。

 

「美味しいね」
「だなー」
「だねー」

 


──風紀委員一年ズの日常。